ホビー大賞

第30回ホビー大賞

――――――<講評>――――――――――――――――――――――――――

今、この稿を書いているのは3月25日です。コロナウイルスについての情報は日々厳しさを増しています。オリンピックも1年延期になりました。タレントの志村けんさんも罹患したとの報道、こうなってきては受賞の皆さまと会場でお目にかかることが出来なくなるのがやむを得ないこととは言え誠に残念です。

さて、今回は今までで最も多く300を超える応募がありました。皆様の優れた作品の中から僅かに決められた枠の賞を決めることは至難です。そういう中で今回の文部科学大臣賞は「SOMの泳ぐロボットたち」に決まりました。本当に水の中で泳ぐのです。ホビー大賞グランプリは「編み物で野鳥を救おう」です。鳥たちに安住の場所をという温かい気持ちが伝わります。

準グランプリは2つ、一つは「段ボウルの帽子」で、これは段ボウルを毛糸のように編んだ作品、素材が段ボウルなのに自然の風合いが良く出ています。もう一つは子供のころに欲しかったのでしょうゴム鉄砲「Twiga単射連射切替ゴム銃」、子供たちと仲良く遊んでそうして作る喜びも分け合って下さい。

努力賞には「柴犬の親子」になりました。実物大ですから何時までも家族と一緒に暮らせます。文字では説明しにくいのですがユニーク賞は木を輪ゴムでつないで造形物とした作品「Tensegrity animals」、ハートウオーミング賞はハンディキャップをもつ皆さんが力を合わせた作品「すてきなおりぞめ!!」を作りました。〆はオリンピックの聖火のスタート地となる東日本大震災の復興を願ってのミニチュアの纏を額に収めた作品「復興~永遠の願い」となりました。

まだ家に居る時間が多くなりそうです。皆様からの作品制作、来年に向けてお願いいたします。

委員長 白石嘉宏(NPO法人ソフトインダストリー研究会理事長)

文部科学大臣賞

SOMの泳ぐロボットたち 鈴鹿中学・高等学校SOM

有志学生団体である私たちは海岸清掃で、海ゴミ問題の現状や悲惨さ、残酷さを感じ、問題の原因が「海の豊かさを知らないこと」だと考えました。そこで子ども達へ楽しく「海の豊かさ」を伝えるためにこの作品を作りました。嘘を伝えないために、丸1日かけてその生き物を観察し、出来るだけ本物に近づけました。魚やウミガメ、イルカなどの泳ぐロボットに触れ、ただの水の塊に見えていた海も、今まで以上に沢山の海の生き物が生き生きと住む海に見えるようになってくれればいいなと思います。

グランプリ

編み物で野鳥を救おう 手編みの鳥の巣を届ける会

編み物で救える小さな命があります。
怪我をした野鳥のヒナは、自力で生きていくことができません。こうしたヒナを保護して、再び自然に還す活動をしている動物レスキュー団体が、保護施設でヒナたちのベッドとして使う「手編みの鳥の巣」を必要としています。「編み物で野鳥を救おう」では、日本全国の編み物ファンや、これを機に編み物に挑戦してくださる鳥好きの方など、沢山の皆さんの思いのこもった「手編みの鳥の巣」を届ける活動を通して、野鳥のヒナの命を救う活動を応援しています。

準グランプリ

段ボウルの帽子 米増 優

“段ボウル”という誰もが見たことのある材料を使って誰も見たことのない造形を作るとう課題の制作物です。段ボウルの安全性や保温保冷性が高い点、保管の場所を取らない点などの特性からヒントを得て、帽子に結び付けました。この帽子は全て、1cm幅の短冊状にカットした片面段ボウルからできています。頭部を覆うクラウン部分は調理用ボウルを型にして、型に沿うように編み込み、ツバ部分はフルートが交互に重なるように巻き付けました。手作りならではの緻密なディテールにこだわりました。

準グランプリ

Twiga(トゥィガ)単射連射切替ゴム銃 山上 哲

子供の時に割り箸を使ってつくったゴム鉄砲。今、持てる技術と、ものづくりの相棒の電動糸ノコ機で、どんなものが創れるか。機能とシンプルさを併せ持ったゴム銃をつくりたい。そんなおもいが形となりできたのがこのTwigaです!
※Twiga〔トゥィガ〕(キリンのスワヒリ語)
輪ゴム充填は最大36本(通常24本)単射と連射を片手で切替ながら射撃することができます。ゴム銃は実銃の「イミテーション」ではなく輪ゴムを飛ばすことに特化した「本物」!

努力賞

柴犬の親子 中山 奈月

7年前から作り始めた羊毛フェルト。もともとは飼っていて亡くなったペットそっくりに作ることが目的でした。長い歳月をかけ、ようやく自身の満足のいく作品を作ることが出来るようになりました。今回は身近な柴犬で母と子の親子愛を再現いたしました。近年親が子を虐待するニュースに胸が痛くなります。もっと平和で優しい世の中になれば良いなと思い再現したしました。これからの目標は、ペットロスに苦しむ方々に寄り添い、少しでも悲しみが癒せるようオーダーを受けていきたいと思います。

ユニーク賞

Tensegrity animals 服部 祥英

動物の体の構造が、小さい頃から不思議でした。大学で機械工学を学んでから、筋肉と骨の組み合わせの合理性に気づき、その美しさに一層魅了されました。偶然、圧縮材を張力材を介して繋げることで出来る、テンセグリティという構造を知りました。実際に作ってみると、軽くて丈夫で柔らかく、まるで生き物に触れているような感触でした。そんなテンセグリティ構造で、動物の筋骨格を表現したら?という発想から生まれたのが、”Tensegrity animals”です。接着剤はほぼ不使用、様々なポーズに変形可能な作品です。

ハートウォーミング賞

すてきなおりぞめ!! 來住 安珠

いろいろ作りました。頑張って作りました。画像は応募の後に作ったものです。きれいな折り染めの和紙を学校の友達が作り、それを使って作りました。入院中なのでみんなと一緒にはできなかったけれど、力合わせてできてうれしかったです。先生も喜んでくれました。
画像の作品は「いっぱいのかご」です。卒業して、折り染め学習は終わったけれど、またいろいろ作っていきたいです。友達ありがとう。先生ありがとう。みんなのおかげでできた作品です。みんなにありがとう。

メモリアル賞

復興~永遠の願い まとい工房 南天

9年前、東日本大震災後に約半年をかけて製作した作品です。当時私は消防職員でしたが、職務以外にも被災地の復旧復興を願う気持ちが、このような形になりました。
纏は江戸火消しの象徴。命がけで市井の人々を守った火消し達。その纏を現在に照らし合わせ、全国47都道府県のシンボルマークを纏各上部に配置しました。
昨今も様々な災害が後を絶ちません。これら災害を決して風化させてはならないとの思いで、日々この作品に手を合わせながら被災各地の安寧を祈っています。